陳満咲杜の「大道至簡」
 

新著のご紹介

2012年08月05日(日)

閑話休題(3)

2008年の金融危機以来、米国経済は、前半堅調、後半失速といったパターンを繰り返してきた。具体的に言うと、上半期では景気に関する楽観論が広がったところ、中盤になってくると雇用、消費の失速が見られ、FRBは合わせて夏場から秋口にかけて対策を打ち出す、これによって年末にかけて再び楽観論に傾く、といった繰り返しだ。今年も例外ではないかもしれない。

6月以降、米国景気感は急速に悪化し、雇用状況も総じて芳しくないものだった。先週末予想以上の新規雇用がリリースされたものの、失業率は依然低いままだ。6月に比べ、景気後退感を否めない。

さらに重要なのは、EUソブリン危機の長期化につれ、中国が率いる新興国の成長にも影を見え始め、共に構造的な問題を露呈している。このような状況の中、ブッシュ政権によって開始された財政措置(税務免除)は、年末まで終了する予定で、延期なしでは景気刺激の原動力を失い、景気後退が確実視される。

大型減税案の終止及び公共支出削減に伴う財政の崖は、確実に米経済を圧迫し始めている。企業は見通しが不透明のままでは投資を控え、新たな就職を生み出せず、消費マインドの低下を招く。

伸び悩みに直面しているなか、米国の財政政策に緩和の余地がほとんどないだけに、金融政策は残された随一選択肢となる。政策の効果が定めではないが、FRBが政策の発動に踏み切るしかないといった見方は根強い。

となると、QE3を打ち出すタイミングに関して議論を広がる。マーケットには米大統領選以降、或いは来年上半期に延期される見方が多く、その根拠は政治的なリスクをFRBが避けたいといった推測にある。

一方、バーナンキ氏は政治的なリスクを背負っても、必要であれば、行動すべき時期に行動するだろうといった観測も根強い。何しろ、「ヘリコプター・ペン」の渾名を持つ議長は自らの行動をもって自己主張を証明する使命があり、またそのために議長に指名された思惑がある。

この意味では、 9月13日のFOMCはQE3、またはQE3に近い政策を発表する絶好のチャンスとなろう。最近の慣例となろうか、ジャクソンホールにおいて、マーケットに示唆を与え、地合いをならしていくことがもっとも想定されやすい。

但し、QE2が効いていなかったように、QE3だけでは、状況を驚くほど改善できない。一方、市場センチメント及び資産価格に対する刺激効果において、インパクトの逓減及び限界を配慮しても、プラスになることは間違いない。リスクオンの市場環境はFRBの行動なしでは確信できないものがある。

Posted at 22時32分 パーマリンク


2012年08月04日(土)

閑話休題(2)

ドラギ総裁はユーロ防衛と誓っていた。有言実行の意味合いでは、2日に行われたECBの結果だけでは失点が多いように見えるが、ドラギ氏の発言をよく吟味すると、かなり大胆な政策発動の可能性を潜んでいるではないかと思う。

それを一言で言うと、ECBによる量的緩和の可能性に尽きる。ドイツの反対も予想されるが、ドラギ氏はドイツ中銀総裁を名指して言ったように、ECB理事による「数の論理」で強行する余地があるから、実現される可能性を否定できない。

ECBはこれまでもスペインやイタリアなどの国債を購入してきたが、あまり効果を出さずにいることを最近のスペイン国債危機でよく観察される。ECBの国債買い入れ自体がいわゆる不胎化した上でのものだったことを市場は見抜き、介入の不発も当然な成り行きだと思われる節がある。またECBはFRBやBOEのようなQE、即ち量的緩和はやらないと常に言ってきた。

ECBは国債買い入れを通して市場に投入した資金を、短期オペを通じて市場から引き揚げし、買い入れを不胎化することをしてきた。しかし危機の深化につれ、ついECBのスタンス転換があるではないかとマーケットが期待している。金曜日ユーロの上昇はこういった市場センチメントの表れであろう。

言い変えれば、以下の2点が非常に重要なポイントだ。まず、「非不胎化」の国債買い入れはQEそのものであることをマーケットは認識している。次に、量的緩和に対する期待は少なくとも中短期スパンではユーロを押し下げるではなく、押し上げることになる。

こういった観察から得られる結論も明白だ。一見矛盾しているように見えるが、FRBの量的緩和期待はドルを押し下げることに対して、ECBの量的緩和期待はユーロを押し上げ、結果的に同じくドルを押し下げることになる。

こういった矛盾を解けるのはそう難しくなかろう。カギはリスクオン/オフの市場センチメントにある。株式市場のパフォーマンスとリンクし、結局リスクオンに寄与する動きがあれば、ドル安/ユーロ高をもたらし、反面、リスクオフのムードが高めれば高いほどドル高/ユーロ安をもたらす。

ECBの量的緩和、紙幣の刷り撒くといった意味合いでは本来ユーロの価値を押し下げるか、国債市場の安定に寄与すれば、EUソブリン危機の一服でリスクオンのムードに転換しやすい。こういった思惑が先行する内、ユーロの反発を続くではないか。

Posted at 20時12分 パーマリンク


2012年07月27日(金)

閑話休題

ギリシャ、スペインのみではなく、EUソブリン危機は欧州核心国のドイツまで広がってきた。しかし、ドイツには悪いニュースであるが、危機を解決するために良いことではないかと思う。

というのは、ドイツ人は優越感をもってEUソブリン危機を対岸の火事と見てきた。従って、ドイツ国民にとって、EU危機は他人事ではなく、焦眉の急となってから始めて、EUソブリン危機の夜明けの可能性を見え始めるではないでしょうか。

EUをリードするドイツに悪材料を続出された。格付け機関ムーディーズによる信用見通しをネガティブに格付され、ドイツ製造業やサービス業の7月PMIは予想よりも悪く、景気の収縮状態が示された。一方、マーケットはドイツの悪材料に対した反応を示さなかった。EUのリスク回避先としてのドイツにリスクヘッジの資金が殺到しているから、ドイツの株式、債券マーケットを支えている。

ドイツの景気減速、間違いなくEUソブリン危機がもたした結果だ。ムーディーズのご指摘通り、ギリシャがEU離脱リスクの増大につれ、EU大国のスペインとイタリアのマクロ経済と融資環境を著しく悪化している。EUを救う責任はドイツのみ果たせるが、ドイツ政府は右顧左眄の態度に終始している。

詰まるところ、ドイツ国民はEUソブリン危機の痛みを肌で感じていないからだ。EUソブリン危機と無縁に、ドイツの失業率は依然として6.8%という歴史的に低い水準に留まり、快適に生活レベルは維持されている。リスク回避しようとした資金の殺到で、貸し出し金利を更に押し下げ、先週短期国債のオークションでは、はじめてマイナス金利が出現した。EUソブリン危機だからこそ生じられた現象だ。他人を救うのは結局自分を救うという意識の欠如で、PIIGS諸国の困況を傍観する雰囲気を醸す。

しかし、前述のように、こういった状況に変化が見られている。3年ぶり低い水準に落ち込んでいるドイツ製造業PMIが物語るように、EU内部に半分の輸出シェアを占めるドイツにとって、ユーロ安の恩恵のみを享受し、無傷に入られるのは当然幻想に過ぎないころだ。EUソブリン危機の炎は間違いなくドイツを焼けどさせようとする勢いを見せる。

だから、ドイツの景気後退が強ければ強いほど、また失業率が高まった場合のみ、ドイツ国民に危機感をもたらすだろう。つまり、ドイツ国民は結局PIIGS諸国と同じ船を乗っているから、助けなければ身分も沈んでしまうと悟れることだ。特に難関とされるEU共同債問題、EUソブリン危機を解決する決め手としてドイツも真剣に考えなければならない時期がきただろう。

道のりがまだ長いようだが、少なくともよい方向に進むには現在ドイツの窮境はよい材料と化す。正に「塞翁が馬」である。

Posted at 01時03分 パーマリンク


2012年07月22日(日)

スナイバー&機関銃士(3)

スナイバーとしてのトテーディングエッジを維持していくのは、機関銃士に逆戻らないことがもっとも肝心だ。何故なら、オーバートレード(過剰取引)はFXトレーダーが犯す最も一般的な誤りであるだけに、初心者だけではなく、成功したベテランでもその誘惑に負けるケースが多いからだ。

オーバートレードしているかという問いに、分からないと答えるトレーダーは恐らく過剰取引を繰り返している。というのは、トレーダーが意識していないなら、オーバートレードになりがちだ。換言すれば、一貫して利益を生み出しているトレーダーの殆どが意図的にオーバートレードを回避している。なぜなら、オーバートレードの誘惑が常にそこにあるからだ。

例えば、日足チャートを元に、取引のルールやエントリー、エグジットのポイントを定めたにも関らず、つい4時間足、時間足、更に15分、5分といったより低い時間枠における
取引チャンスに心を奪われていないか、そしてつい大した見込みのない「短期トレード」を繰り返し、オーバートレードに嵌めていないか。

別の例では、現在のトレードが含み益を乗っているからという理由だけで、ポジションを増やしたりしていないか。追加されたトレードは本当に取引プランに基づいた「リアルートレード」だったか、それとも単に最初上手くいっていたポジションに刺激された性急な行動だったか。

このような典型的な状況よりさらに多数のものを加えるが、要するにオーバートレードはごく普通に存在する問題で、オーバートレードの誘惑は常にトレーダーを打ち負ける存在だ。問題は、多くのトレーダーが単に気づかいないことだ。

ゆえに、所謂「スキャルピング」といったやり方の誘惑を意図的に打ち立たないといけない。構造的、必然的にオーバートレードになるようなやり方は必ず失敗するからだ。幾ら優秀なスナイバーでも、短期間打てば打つほど命中率が下がり、命の危険が晒されると同じく、オーバートレードすればするほど、優秀なトレーダーでも損失の運命から抜け出せなくなるからだ。

Posted at 22時33分 パーマリンク


2012年07月21日(土)

スナイバー&機関銃士(2)

我々個人トレーダーは、軍の狙撃兵(スナイバー)からもっとも学ばなければならないは、特定の状況において如何に確実性を確保することであろう。

スナイバーは確実にターゲットを的中するため、スナイバーらは意図的に確信できない狙撃を外し、確実なチャンスのみを捉えようとする。換言すれば、よりすくない行動のほうが勝率を上げることがスナイバーらは熟知している。

外国為替取引は間違いなくこういった特定な状況下に行われている。しかし、多くの個人投資家がより多くの選択肢のほうがいいと感じたままトレードを始めたのは一般的だ。より多い指標、より多い情報、より多い取引は、より多い分析とより多いスステムロジックなどなど・・・

そのような誤解に基づいた信念の結果は当然の如き、そのほとんどが常に過剰取引となりがちだ。ほとんどの初心者が機関銃士と化し、すべての値動きをチャンスとして捉えようとする一心で、手持ちの弾丸(お金)を撃ち捲くる。当然のように、発射された弾丸の数と比例して、取引損も膨らんでいく。命中しない弾は戦争時において直ちに機関銃士の命を落とさないかもしれないが、失敗した取引は確実に元本を損ない、ダメージを与える。

だから、最初のステップとして、個人投資家らは機関銃士ではなくスナイバーとしての自己意識を持つことが重要だ。スナイパーが決められたターゲットをただ辛抱強く待つように、トレーダーは、市場で自分自身が事前に定義されたトレーディングエッジを見つけ出す方法を学習する必要がある。

スナイバーと化すトレーダーは多くの訓練から確信を得られる。それはより多い情報、より多い指標、より多い取引ではなく、より少ない指標、より少ない情報、そしてより少ない取引に如何に収束させることだ。つまり、より少ない選択肢に集約させ、厳選することから確信を生み出させることだ。

なぜなら、複雑かつ常に変化している状況において、すべての選択肢を把握することは不可能だし、そういった試みは返って失敗を招くからだ。スナイバーらは定めたターゲットのみ追求し、自ら選択肢を制限させることによって精度を上げたと同じく、我々一般投資家は自ら選択肢を制限すべきだ。トレーディングエッジを手に入れる近道はまさにこれである。 

このような訓練を多く経験すればするほど、トレーダー成績が改善されるだろう。トレーダーは如何に取引の衝動を抑制し、正しい取引のチャンスを見極めてからはじめてトレーディングエッジを手に入る。そして忍耐が時間にわたって成果をあげるのを見始めるとともに、それを如何に維持していくことも重要である。

Posted at 23時24分 パーマリンク


過去の記事へ

ページのトップへ ページのトップへ

Sponsor AD

プロフィール

株式会社 陳アソシエイツ

代表取締役

陳満咲杜

1992年に来日し、生活費と学費をアルバイトでまかないながら、大学時代より株投資を開始。中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。日本、中国、台湾地域をカバーした執筆、講演、情報サービス、投資家教育などの活動に取り組んでいる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。

活動状況

陳アソシエイツ公式WEBサイト。
豊商事YutakaMaeketTVにて毎月放送中
ザイFXでのコラム。毎週金曜日更新。
ラジオNIKKEI「FXトレンドの真実」。毎週月曜放送。
デイリーベースのストラテジーを配信。

著書

2012/8

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近の記事

FX-BLOGモバイル

FX-BLOGモバイル
iPhone/touchからFX-BLOG.JPへアクセス(詳細はこちら
FX-BLOGモバイル
ケータイでバーコードを読み取りアクセス(詳細はこちら
 

スポンサードリンク

検索


当サイトコメントについて

当コメントは情報提供のみを目的として作成されたものであり、投資に関してはご自身でご判断くださいますようお願い致します。また、当資料は著作物であり著作権法により保護されております。無断で全文または一部を転載することはできません。

RSS1.0

[Login]


powered by a-blog
Copyright © 2012 PhiConcept,inc All rights reserved.