陳満咲杜の「大道至簡」
 

新著のご紹介

2012年08月31日(金)

先生のお話

ある海外の大方と文通をできたなので、興味深いお話を聞けた。エリオット波動論に造詣が深いこの先生によると、損するFXトレーダーの多くは以下の三つの失敗を犯しているという。

第一に、FXトレーダーの大半はディリートレードを好む傾向にある。それ自体悪くないが、値動きを追いかける羽目になりやすい。その上、短期志向が強ければ強いほど、大した確信もなく、大した根拠もないトレードに迫られるだけではなく、トレードのタイミングは往々にして外れ気味だ。故に、ストップロスの設定は難しくなり、本当の節目から遠くなりがちで、マーケットの変動によって振り出される宿命にある。

第二、FXトレーダーの多くはしばしば相場における瞬間的な熱さ、やエキサイティングな値動きに興奮させられ、結果的に精神的な不安定とプレッシャーに晒される。すべての値動きを利益獲得のチャンスとして利用できるといった幻想を元に、利益を逃したといった後悔、そして次のチャンスをまた逃していくではないかといった不安は典型的な症状だ。また、損失をできるだけ早めに取り戻したいという焦りもトレーターの苛立ちを増すという。こういった精神状態では、失敗しないほうが難しいことだ。

第三、テクニカル要因に限られた理解しかもっていない。たとえば、外国為替市場のテクニカル分析に基づいた様々なアプローチのうち、多くのトレーダーはエリオット波動原理を聞いたことがある。しかし、どのように活用すればよいかを知らない者が多い。

もっとも代表的なのは、多くのトレーダーはエリオット波動によるカウントの本質を知らずにして間違いを犯すと先生は言う。たとえば、複雑型の調整変動といった市況において、マーケットは事実上予測不可能なパターンに陥るから、特定な方向を確信したトレードほど失敗の確率が高い。

では、こういった複雑型調整波動の進行を我々はどうやって事前に知ることができるしょうか。エリオット波動論に関する正しい知識が役立つところだと先生は指摘する。5波の動きと知られる構造の中、オーターネーション(交替)の法則があり、第2波は単純だった場合、第4波は複雑になり、反対もしっかりである。こういった基礎的な知識だけでも、トレーダーは無意味なトレードを回避でき、トータルな成績をアップできるはずだという。

もちろん、それだけではうまくいくという保証はない。しかし、ランダムな動きのほとんどを回避するように注意して、適切な取引チャンスの厳選やリスクを取るために必要な手段を確保できれば、成功の確率を間違い高める。また、投機が投資と異なっているところ、つまりエントリーのタイミングも非常に重要であるため、FXトレーダーは自らの戦いを選択することから慎重に学ばなければならない。先生はこう書き加えている。

Posted at 01時33分 パーマリンク


2012年08月26日(日)

クロス通貨ペアの話(3)

23日ユーロ/ドルは1.2600関門手前に迫った。ユーロの切り返しはファンダ上の理由や背景をもって説明するのがもっぱらだが、テクニカル上の視点のほうがより大事だ。

当然のように、ユーロ/ドルはもっとも重要なドルストレート通貨ペアであるが、ユーロ全体の状況を精確に把握するにはユーロクロス通貨ペアをきちんとフォローする必要がある。ユーロクロスはユーロ/ドルの値動きによって形成される一方、ユーロクロスの値動きはユーロ/ドルのレート形成にも影響を及ばす、こういったインターラクティブの関係はクロス通貨ペアとドルストレート通貨ペア全般に言えるが、ユーロクロスの重要性は格別である。

というのは、ドル以外、ユーロはもっとも重要な通貨となるから、ユーロクロスとは言え、多くの通貨ペアはドルストレートと同様、直接インターバンク市場にて取引されている。ユーロ/円、ユーロ/ポンド、ユーロ/スイス、ユーロ/豪ドルなど通貨ペアは大きな取引高を誇り、ドルストレートに大きな影響を与えている。そのうち、ユーロ/スイスフランのように、ドル/スイスフラン以上に影響力を持つから、ドル/スイスフランのレートは実にユーロ/ドルとユーロ/スイスフランの掛け算によって算出されると言われるほどだ。 (この場合、ドル/スイスフランはユーロ/ドルとユーロ/スイスフランのクロス通貨ペアと化していると言っても過言ではない)

ゆえに、賢いトレーダーほどクロス通貨ペアの動向を重視し、そしてユーロクロスの値動きから目を離さない。最近の事例では、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ユーロ/ポンドがほぼ同じタイミングで(7月24、23)底打ちしたのは好例であろう。

その上、ユーロの切り返し、継続かつモメンタムを増していくことを察知するには、所謂ユーロキャリーが発生しやすい通貨ペアの動向をフォローしておくのはもっとも近道であった。こういった通貨ペアにはユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドルらは代表的な存在だ。

もっとも、キャリートレードとは安い金利(或いはその見通しである)の通貨を借り入れ、高い金利の通貨に転換し、その金利差を享受する手法だが、肝心なのはトレンドが継続していることだ。

つまり、想定される一定の期間において、高金利通貨のほうが継続的に上昇し、低金利通貨のほうが継続的に下落しなければならない。そうでなかれば、金利差を得たとしても、高金利通貨の下落と低金利通貨の上昇によって生じた価格差がもたらす損失のほうははるかに大きいので、キャリートレードは崩壊することになる。

その上、キャリートレードが発生しているかどうかは実に判定に難しい場合が多い。高金利通貨ベアが買われるのは単純に金利が高いからといった理由のみではないからだ。それにしても、ユーロキャリーと言われる通貨ペアをよく観察すれば、多くのヒントを得られると思う。

Posted at 23時47分 パーマリンク


2012年08月19日(日)

クロス通貨ペアの話(2)

前回では、かなりリスクオンの市場環境でなければ、ドル/円の暴騰が難しいと指摘していたが、対円だけではなく、ユーロなどそのほかの主要通貨に対するドル全体のパフォーマンスはEUソブリン危機の恩恵を受けていることを忘れてはいけない。

言い変えれば、ドルはリスク回避先として評価され、買われている以上、リスクオンになればなるほど、ドル全体は実に売られやすい傾向にある。逆に言えば、リスクオンの環境になればなるほど、ユーロ/ドルは上昇しやすくなる。従って、ユーロ/ドルが下げ続いている間、ドル/円のみ暴騰といった構造は基本的に成立しにくいわけだ。

もっとも、クロス円としてのユーロ/円のレートは理論上ユーロ/ドルとドル/円レートの掛け算から算出できるものだから、ユーロ/ドルの下げはユーロ/円の下げをもたらし、ユーロ/円における円高圧力を生じさせる。ユーロ/円経由の円高圧力は逆にドル/円に影響を及び、ドル/円のみの暴騰はあり得ないからである。

クロス通貨ペアの仕組みを理解することによって、巷の俗論に安易に流されなく済むだろう。例えば、EUソブリン危機を根拠にユーロ安の進行を鼓吹する一方、ドル/円だけ高値ターゲットを提示してしまうといった「ロジック」の真贋を判定できる。

その上、何といっても相場全体像の把握によって市場の内部構造の発見につながる、といったところはもっとも重要で、大局観の形成に役に立つでしょう。最近では、ユーロ/円の94円台死守が好例である。

ユーロ/円は7月24日94.10の安値を付けてから反発してきた。ユーロ/ドルの値動きとリンクしているものだが、重要なのはユーロ/円によって94円台はとっても大事なレベルであった。

同レベルは08、09年安値から2012年1月安値を連結するサポートラインに合致していただけに、下回れば大きな下値余地を拓くことになる。そして、ユーロ/円の下値余地拡大は間違いなくユーロ/ドルの暴落を暗示、またドル/円の頭打ち、至って反落を示唆するサインである。

EUソブリン危機でユーロの暴落は避けられないといった世論の強さに鑑み、ユーロ/円の94円台割れも当然の成り行きとみられていたが、それを回避したことは重要なシグナルを点灯したわけだ。即ち、ユーロ/ドルの底割れ回避とドル/円の調整(反落)終焉である。

それどころか、98円台を回復してきたので、ドル/円の反騰だけではなく、ユーロ/ドルもある程度のリバウンドなしでは達成できないものだから、ユーロ/円は先週市場の基調を象徴的な存在となった。

Posted at 23時53分 パーマリンク


2012年08月18日(土)

クロス通貨ペアの話

「クロス円の動きが理解できてはじめて為替相場が理解できる」・・・ある外資系バンカーが著作の中このような目次を設けていることが、より適切な表現は「クロス通貨ペアの動きを理解できてはじめて為替相場が理解できる」ということであろう。

ならぜら、より相場の全体像を掴むには、円絡みの「クロス円」に限定するのではなく、「クロス通貨ペア」全般の値動きをフォローする必要がある。クロス通貨ペアなしでは精確な相場像を把握できないと言い切れるほどだ。

まず、クロス通貨ペアの定義とは、交換関係にある両通貨のどちらも米ドルが入っていない通貨ペアである。勿論、その内の一方に円が入っていれば、クロス円というカテゴリーに入る。

次に、クロスという名称の由来に重要な意味を持つ。つまり、ドルストレート(ドルとその他外貨)通貨ペアのレートがクロス通貨ペアのレートを決める仕組みで、それぞれのビットとオファーを交差(クロス)させ、掛け算で算出する必要があるから、クロスいった呼び方が定着していたわけだ。

だから、逆計算という始点から、クロス通貨の動向から特定の通貨の動きを全面的に把握でき、その延長で相場全体像の把握につながる場合は多い。先週の相場を例としてみてみよう。

先週ユーロ/豪ドル、ユーロ/円、ユーロ/NZドル、ユーロ/ポンドなどユーロクロスはほぼすべて陽線引けとなった。それはユーロが余程強いか、それともほかの通貨が余程弱い、のどちらかであることを示唆する現象だ。

実際、ユーロ/ドルは陽線引けとなったものの、値幅は限定的だったから、値幅が相対的に大きかったユーロ/豪ドルとユーロ/円に鑑み、先週豪ドルと円が弱かったことが分かる。

そして豪ドル/円の週足も陽線だったので、より弱いのは円であることを確定できる。だから、ドル/円は一番上昇幅を有していたはずで、ユーロクロスの中、先週ユーロ円のパフォーマンスが一番よかったわけだ。

そして、EUソブリン危機の進行でユーロ暴落論が根強いなか、ユーロ/円の上昇は示唆を富む。なぜなら、クロス円なので、ユーロ/円の上昇は仮にドル/円が暴騰したとしても、同時にユーロ/ドルが少なくとも暴落を回避できたでない限り、実現しにくいものだ。

しかし、ドル/円のみの暴騰はなかなか足許の状況では考えにくい。なぜなら、かなりリスクオンのムードが強くないと、円売りは進めにくいからだ。その上、クロス円の仕組みから考えても、ドル/円のみ暴騰といった話しには矛盾が生じる。詳説はまた次回。

Posted at 23時48分 パーマリンク


2012年08月11日(土)

HFTの脅威

多くの銀行系ディーラーにとって、為替市場におけるHFT(フラッシュトレードと言われ、ヘッジファンドらが所有される高頻度取引システム)は頭痛の種だ。また、多くの通貨ブローカーはHFTの流行に危機感を募り、監査当局に取り締まりを要請する動きさえある。

彼らに言わすと、HFTに毎日苛立されているという。マーケットにおける通常の取引を一々邪魔してくれるくせに、市場の流動性に貢献していない。

為替ブローカー最大手のICAPはかく乱要素としてのHFTを撃退しようしている。例えば、主要統計指標が発表された後の時間差を狙う「統計アービトラージ」、つまりNYで発表される米経済指標がロンドン市場に影響してくる僅か数ミリ秒(千分の?秒)を狙う手法は取締りの対象になると発表した。

他の例では、HFTシステムが非常に早いスピードで注文を出し、また取り消してしまうから、人間トレーダーはそれの存在さえ気づくことできないという。幾ら熟練な人間トレーダーでも、オーダーを出してから取り消すには、最低300ミリ秒がかかるといわれているが、HFTシステムは同じことをやるには、1ミリ秒未満だ。

近年、株式やデリバティブ取引で急増したHFT取引の威力は外為市場にも押しかかける。それにしても、コンピューターと通信技術の発達で、1ミリ秒未満でも、億ドル単位の取引を完成できる本日では、為替マーケットは比較的に伝統色を保てるといわれている。

というのは、概算では、為替マーケットにおける取引の半分程度はなお人間トレーダーによって行われ、為替市場における人間の判断力の重要性は株式など他の金融市場より高いとみられるからだ。また、インターバンク市場であるだけに、清算機構の分散で電子取引の統一化、汎用化を阻止している側面もある。

それにもかかわらず、世界最大金融市場へ参入する可能性に憧れ、もっとも強力なHTF業者らは虎視眈々だ。株式市場取引量の低下で、多くの有力業者は為替市場に進出始まった。もっと高度に発展し、完全に規制された株式市場では、何百もの異なる取引プラットフォームが存在しているに対して、外為市場にはわずか十数個しかないという状況はHFT業者にとって魅力的だ。

いずれにせよ、為替マーケットにおけるHFTの存在感はますます高まるに違いない。そこで我々個人投資家に示唆があれば、以下の2点に集約してくるだろう。

1、 所謂スキャルビングといった超短期トレードを繰り返すトレーダーにはこれからまずます勝ち目がなくなる。

2、 経済指標発表瞬間の値動きを狙う「イベント型トレーダー」は「カモ」にされるリスクはますます高まる。

この辺の話は、実は前に書いた「スナイバーと機関銃士」に通じる部分が多いので、詳説はまた次回。

Posted at 11時50分 パーマリンク


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プロフィール

株式会社 陳アソシエイツ

代表取締役

陳満咲杜

1992年に来日し、生活費と学費をアルバイトでまかないながら、大学時代より株投資を開始。中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。日本、中国、台湾地域をカバーした執筆、講演、情報サービス、投資家教育などの活動に取り組んでいる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。

活動状況

陳アソシエイツ公式WEBサイト。
豊商事YutakaMaeketTVにて毎月放送中
ザイFXでのコラム。毎週金曜日更新。
ラジオNIKKEI「FXトレンドの真実」。毎週月曜放送。
デイリーベースのストラテジーを配信。

著書

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