陳満咲杜の「大道至簡」
 

新著のご紹介

2012年09月23日(日)

クロス通貨ペアの話(6)

ユーロの切り返し、当然のように、ユーロ/ポンド、ユーロ/円のみではなく、ユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドルといったクロス通貨ペアでも確認できるはずだった。その上、対豪ドル、対NZドルにおけるユーロのペアトレンドはかなり長く続いたため、証左材料としてより価値のある存在だった。

実際、ユーロ/豪ドルは08年10月高値から今年7月安値まで約45%の下落を演じ、ユーロ/NZドルも09年2月高値から今年2月安値まで約42%の下落率を記録した。豪ドルとNZドルはEUソブリン危機以外、金利差によるユーロキャリートレードの対象となっただけに、ユーロ売り/豪ドル買い、NZドル買いは非常に強力なトレンドを作り出した。

ゆえに、ユーロ/ドルの切り返し、もっとも強かった豪ドル、NZドルに対しても確認できれば、ホンモノと認定しやすいうえ、前記ユーロキャリートレードの解消があれば、一段とユーロの反騰を強める結果となる。この辺における整合的な見方を重視すれば、ユーロの切り返し、継続できるかどうかを測るには重要なサインと成り得るだろう。

当然のように、ユーロのベアトレンド、対豪ドル、対NZドルがもっとも強かったので、ユーロ/ポンド、ユーロ/円のように、ユーロ/ドルとほぼ同じタイミングをもってリバウンドを展開するわけにはいかない、遅れた形で底打ちしてくれるといった推測もできる。従って、両通貨ベアの切り返し自体による追加的なサインとしての意味合い、また底打ちした後のトレンド及びモメンタムをもってユーロ全体の強弱を測れる効用はより重視されるのである。

ユーロ/豪ドルの底打ちは8月2日、ユーロ/NZドルの底打ちは8月3日だった。8月2日、ユーロ/ドルは7月23日安値から8日間(取引日)の高値を更新したものの、同日陰線引きで、1.2133の安値を付けていた。7月27日安値1.2042に再び接近しただけに、ユーロ/ドルの切り返しは短命で終わり、再びベアトレンドへ復帰してもおかしくなかった。従って、ユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドルの安値更新も自然な成り行きと受け止めていた。

しかし、その後の8月3日、ユーロ/ドルは大きな陽線をもって再度切り返し、翌週の8月6日では、わずかでありながら高値更新していた。8月2日の足型に鑑み、これは非常に有意義なサインとして解読されるので、ユーロの高値志向を示唆していた。詳細は当方のブログで解釈しているから、ここでは重複を省くが、肝心なのはフォローの材料としてユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドルの動向だった。

ユーロ/豪ドルは8月9日、10日ともに1.1611の安値を示し、つい8月2日の安値を割り込めなかった。単純に「ダブルボトム」というパターンとして見做され、「谷」を示しているのは8月6日高値の1.1770だった。前記ユーロ/ドルにおける同日の値動きやその意味合いに鑑み、クロス通貨ペアとしてユーロ/豪ドルの参考意義が一段と強まるものだった。

Posted at 23時55分 パーマリンク


2012年09月13日(木)

クロス通貨ペアの話(5)

前回ユーロ/ポンドを言及していたが、要するにユーロの強弱、対ドルのみではなく、対ポンドの値動きも理解できれば、より鮮明に捉えたわけだ。実際、昨年7月からほぼ一貫して下がり続けていたユーロ/ポンドは7月23日安値をもって下げ止まっていたので、翌日ユーロ/ドルも一旦底打ちをしていたことと整合的に考えれば、ユーロ安一服の可能性を考えられたのである。

遡ってみていくと、メイントレンドはベアとは言え、ユーロは一直線に下がってきたではなく、途中リバウンドを展開していた。例えば、ユーロ/ドルは1月16日の安値をもって一旦底打ち、2月末まで切り返しを展開した。対応的に、ユーロ/ポンドは1月9日から一旦切り返しを展開、2月24日まで反騰していた。タイムラグがあったものの、整合的に両通貨ベアの動向を把握できれば、ユーロの強弱とその変化をいち早く察知できたと思う。

従って、今回7月安値をそろっていた際、同安値更新の有無を注目すべきだった。その後、両通貨ペアはともに安値を更新せず、反騰を続いたことに鑑み、ユーロ全体は売られるではなく、買われっていることを理解できる。ユーロ/ポンドは理論上クロス通貨ペアであるが、実はメイン通貨ペアの役割を果たしているから、他のユーロクロスとの区別をつけておくべきだ。この意味でも、ユーロ/ドルとユーロ/ポンドの整合性を重視することが大事である。

では、他のユーロクロスはどうなっていたでしょうか。ユーロ/円も同じく7月24日にて安値をつけており、その上、同安値は97関門を守っていたから、非常に重要な意味合いを示唆していた。(この辺の話は当方の公式ブログをご参照)、従って、ユーロ/円もユーロの底打ちを示唆するより蓋然性の高いサインを点灯していたわけだ。

巷はユーロ安一辺倒の間最中、ユーロの底打ち、至ってリバウンドを予想するにはそれなりの勇気が必要だ。しかし、ファンダメンタルズに頭を余計に悩まされず、テクニカル・アナリシスに専念すれば、おのずと正解を見えてくる。ユーロクロスの動向を丹念にフォローしていくのもテクニカル・アナリシスにおける重要な一環である。

「ブルベアFX通信」は7月23日から、ユーロ/ドルの長期スパンに関する展望は以下の通りと記していた。当然のように、前記の分析だけでは物足りない。しかし、根拠の一部として活用させていただいていたのは確かである。

「長期スパン:11年5月高値を起点とした下落変動はダブルジグザグ型パターンと示し、そろそろ底打ちしてE波上昇に入る公算だが、2月高値を起点とした下落波は5波構造で、6月1日安値を下回ったことを受け、同序列における最終波に入ったと見なされる。1.2150割れをもって1.2000関門前後まで下値余地を拓くが、リバウンド間近といった判断は不変。200日線を第一ターゲットと看做す。(@7/23)」

実際、一昨日にてユーロ/ドルは200日線を打診し、ブレイクした。だから、「ブルベアFX通信」におけるユーロ/ドルの見通しは9月10日になってから初めて修正されたわけだ。長期スパンの定義とは「1ヶ月〜3ヶ月程度」と定めているだけに、毎日修正されるものではなく、またメイントレンドだからこそ蓋然性が高いわけである。

本日では誰でもECBの政策とか、QE3の可能性云々をもってユーロの反騰を説明できるか、本当のところ、相場はこういった材料が出る前にすでに来るべきトレンドを示唆してくれていた。材料はあくまで後解釈である。

Posted at 23時36分 パーマリンク


2012年09月02日(日)

クロス通貨ペアの話(4)

前回ではユーロクロスの重要性を強調していた。そして、所謂ユーロキャリートレードにも触れていたが、キャリートレードの発生と認定は往々にして事後型であることを強調しておきたい。というのは、高金利通貨が買われたのは、単純に金利が高いのみではなく、高金利通貨自体が上昇するトレンドにあるから、ロング筋の動機はキャリートレードであるかどうかは定めない。

逆に言えば、高金利通貨とは言え、買われるではなく売られる場合があり、反対に低金利通貨のほうが継続的に買われるケースも多い。最近の好例は低金利の円であろう。07年サブプライムや08年リーマンショック以降、円はほぼ一貫的に買われ、本日になってもなお高値圏での推移に留まっている。

もっとも、ユーロ/円などクロス円を含め、円全体の強さは07年前半まで進行していた円キャリートレードの反動といった側面が強く、円キャリートレードの崩壊がもたらした結果でも言える。このような教訓を生かして、昨今の市況を察知できるヒントを得られるではないかと思う。

8月ではユーロ/ドル陽線引けとなり、1.2600関門を打診した。ドルストレートとクロス通貨ペアの関係に鑑み、ユーロクロスからユーロ/ドル反騰の兆しを探れるはずで、反対もしっかりである。従って、ユーロクロスの状況からみていくのは重要である。

一言ユーロクロスとは言え、実はそれぞれ異なる部分がある。ユーロ/ポンドはユーロ/円と違い、当然ユーロ/豪ドルとも違ってくる。たとえ同じくヨーロッパ通貨同士でも、ユーロ/ポンドとユーロ/スイスフランも随分違う。

ユーロ/ポンドとユーロ/スイスフランの違いは厳密にいえばポンドとスイスフランの違いだ。ファンダメンタルズ的な背景に関して、究極な表現とすれば、スイスフランはリスク回避先と見なされ、ポンドはそうではないないところだ。その上、周知されたように、スイス当局はスイスフラン高を阻止するため、マーケットに「無制限」介入を繰り返しており、ユーロ/スイスフランは年初来ほぼ動かない状態に陥っているから、値動きからまったくシグナルを読み取れない。

一方、ユーロ/ポンドは違う。こういった介入のリスクが全くない上、量的緩和も再三実施してきたポンドの値動きから相当シグナルを読み取れるはずだ。実際、2011年7月高値からユーロ/ポンドは大きな下落トレンドを形成しており、今でもメイントレンドとしてベア相場を維持しているとみられる。

本来、量的緩和が実施される通貨には大きな切り下げ圧力を掛かり、弱い変動に辿るはずだが、それでもユーロに対して継続的に買われたのは他ならぬ、ギリシャ危機、イタリア危機、そしてスペイン危機といったEUソブリン危機の連続といった大きな背景が利いているからだ。換言すれば、ユーロ/ポンドのメイントレンドはユーロの弱さを強く示唆していた。

Posted at 23時33分 パーマリンク


2012年08月31日(金)

先生のお話

ある海外の大方と文通をできたなので、興味深いお話を聞けた。エリオット波動論に造詣が深いこの先生によると、損するFXトレーダーの多くは以下の三つの失敗を犯しているという。

第一に、FXトレーダーの大半はディリートレードを好む傾向にある。それ自体悪くないが、値動きを追いかける羽目になりやすい。その上、短期志向が強ければ強いほど、大した確信もなく、大した根拠もないトレードに迫られるだけではなく、トレードのタイミングは往々にして外れ気味だ。故に、ストップロスの設定は難しくなり、本当の節目から遠くなりがちで、マーケットの変動によって振り出される宿命にある。

第二、FXトレーダーの多くはしばしば相場における瞬間的な熱さ、やエキサイティングな値動きに興奮させられ、結果的に精神的な不安定とプレッシャーに晒される。すべての値動きを利益獲得のチャンスとして利用できるといった幻想を元に、利益を逃したといった後悔、そして次のチャンスをまた逃していくではないかといった不安は典型的な症状だ。また、損失をできるだけ早めに取り戻したいという焦りもトレーターの苛立ちを増すという。こういった精神状態では、失敗しないほうが難しいことだ。

第三、テクニカル要因に限られた理解しかもっていない。たとえば、外国為替市場のテクニカル分析に基づいた様々なアプローチのうち、多くのトレーダーはエリオット波動原理を聞いたことがある。しかし、どのように活用すればよいかを知らない者が多い。

もっとも代表的なのは、多くのトレーダーはエリオット波動によるカウントの本質を知らずにして間違いを犯すと先生は言う。たとえば、複雑型の調整変動といった市況において、マーケットは事実上予測不可能なパターンに陥るから、特定な方向を確信したトレードほど失敗の確率が高い。

では、こういった複雑型調整波動の進行を我々はどうやって事前に知ることができるしょうか。エリオット波動論に関する正しい知識が役立つところだと先生は指摘する。5波の動きと知られる構造の中、オーターネーション(交替)の法則があり、第2波は単純だった場合、第4波は複雑になり、反対もしっかりである。こういった基礎的な知識だけでも、トレーダーは無意味なトレードを回避でき、トータルな成績をアップできるはずだという。

もちろん、それだけではうまくいくという保証はない。しかし、ランダムな動きのほとんどを回避するように注意して、適切な取引チャンスの厳選やリスクを取るために必要な手段を確保できれば、成功の確率を間違い高める。また、投機が投資と異なっているところ、つまりエントリーのタイミングも非常に重要であるため、FXトレーダーは自らの戦いを選択することから慎重に学ばなければならない。先生はこう書き加えている。

Posted at 01時33分 パーマリンク


2012年08月26日(日)

クロス通貨ペアの話(3)

23日ユーロ/ドルは1.2600関門手前に迫った。ユーロの切り返しはファンダ上の理由や背景をもって説明するのがもっぱらだが、テクニカル上の視点のほうがより大事だ。

当然のように、ユーロ/ドルはもっとも重要なドルストレート通貨ペアであるが、ユーロ全体の状況を精確に把握するにはユーロクロス通貨ペアをきちんとフォローする必要がある。ユーロクロスはユーロ/ドルの値動きによって形成される一方、ユーロクロスの値動きはユーロ/ドルのレート形成にも影響を及ばす、こういったインターラクティブの関係はクロス通貨ペアとドルストレート通貨ペア全般に言えるが、ユーロクロスの重要性は格別である。

というのは、ドル以外、ユーロはもっとも重要な通貨となるから、ユーロクロスとは言え、多くの通貨ペアはドルストレートと同様、直接インターバンク市場にて取引されている。ユーロ/円、ユーロ/ポンド、ユーロ/スイス、ユーロ/豪ドルなど通貨ペアは大きな取引高を誇り、ドルストレートに大きな影響を与えている。そのうち、ユーロ/スイスフランのように、ドル/スイスフラン以上に影響力を持つから、ドル/スイスフランのレートは実にユーロ/ドルとユーロ/スイスフランの掛け算によって算出されると言われるほどだ。 (この場合、ドル/スイスフランはユーロ/ドルとユーロ/スイスフランのクロス通貨ペアと化していると言っても過言ではない)

ゆえに、賢いトレーダーほどクロス通貨ペアの動向を重視し、そしてユーロクロスの値動きから目を離さない。最近の事例では、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ユーロ/ポンドがほぼ同じタイミングで(7月24、23)底打ちしたのは好例であろう。

その上、ユーロの切り返し、継続かつモメンタムを増していくことを察知するには、所謂ユーロキャリーが発生しやすい通貨ペアの動向をフォローしておくのはもっとも近道であった。こういった通貨ペアにはユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドルらは代表的な存在だ。

もっとも、キャリートレードとは安い金利(或いはその見通しである)の通貨を借り入れ、高い金利の通貨に転換し、その金利差を享受する手法だが、肝心なのはトレンドが継続していることだ。

つまり、想定される一定の期間において、高金利通貨のほうが継続的に上昇し、低金利通貨のほうが継続的に下落しなければならない。そうでなかれば、金利差を得たとしても、高金利通貨の下落と低金利通貨の上昇によって生じた価格差がもたらす損失のほうははるかに大きいので、キャリートレードは崩壊することになる。

その上、キャリートレードが発生しているかどうかは実に判定に難しい場合が多い。高金利通貨ベアが買われるのは単純に金利が高いからといった理由のみではないからだ。それにしても、ユーロキャリーと言われる通貨ペアをよく観察すれば、多くのヒントを得られると思う。

Posted at 23時47分 パーマリンク


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プロフィール

株式会社 陳アソシエイツ

代表取締役

陳満咲杜

1992年に来日し、生活費と学費をアルバイトでまかないながら、大学時代より株投資を開始。中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。日本、中国、台湾地域をカバーした執筆、講演、情報サービス、投資家教育などの活動に取り組んでいる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。

活動状況

陳アソシエイツ公式WEBサイト。
豊商事YutakaMaeketTVにて毎月放送中
ザイFXでのコラム。毎週金曜日更新。
ラジオNIKKEI「FXトレンドの真実」。毎週月曜放送。
デイリーベースのストラテジーを配信。

著書

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