2010年09月04日(土)
1分足スパンモデルを用いた実際のトレード [トレードの心得]
以下は、本日発行しました無料メルマガからの抜粋です。
特に、後半部分にて1分足スパンモデルの利用方法について、今週末の米国雇用統計後のドル円相場を具体例として解説していますので、どうぞ、ご参考にされて下さい。
■皆様、今週もお疲れ様でした。週末金曜日に発表になった8月分の米国雇用統計をきっかけに乱高下する動きも見られただけに、最後にまた疲れが残った方もいらっしゃるかもしれません。一方で、上手くマーケットの動きに乗れて、収益を増やすことが出来た方もいらっしゃることでしょう。どのような経験をされたとしても、過去の出来事は全て起こってしまったことであり、悔やむ必要はありません。何故なら、全て、現在も含めた、これからの将来に生きてくるからです。
成功する人は、過去のことを未来への教訓としてあらゆる出来事を糧にしていきます。一方で、成功しない人は、過去のことをいつまでも悔んで自分を責めてしまいます。中には、周りのせいにしてしまう人もいるようです。自分の身の周りに生じていることは、全て自分が引き起こしているのだという認識が大切ですが、全て意味があって生じているのだと思った時点から、プラス方向に進むことが出来ます。
あの成功コーチングで有名なジェームス・スキナー氏は、「人生には成功する経験と学ぶ経験の2つしかない」と言っています。つまりは、失敗はないということです。そして、望む結果が得られていなければ、ただアプローチを変えれば良いのだと勧めています。
さて、それでは、今週の相場を振り返りながら、これからの相場にどう生かしていけば良いか考えてみましょう。
■「FXに一攫千金はない」
まず、大きな枠組みの観点からお話し、その後に、具体的な課題に入っていきたいと思います。
一般論として、FXや株式投資にて、一攫千金を夢見る人は後を絶たないようです。確かに、一般世間では、簡単に儲かるかのごとく宣伝している雑誌等も多いこと、各FX会社の広告も影響して、新規参入されてくる個人投資家も多いと聞きます。しかしながら、決して脅すつもりはないのですが、しっかりとした「トレード技術」なく、安易にトレードし始めると、せっかくのトラの子の自己資金をマーケットに献上することになりかねません。
実際のところ、FXなり、株式相場をよく知っている人ほど、甘い幻想を持たず、慎重なスタンスでマーケットに入っているようです。一方で、FXや株式のことをあまり知らない人ほど、過大な期待を抱き、一攫千金を夢見て、安易にマーケットに入っていくようです。FXさえ始めれば、短期間のうちに資産が何倍にも膨れ上がり、お金持ちになれると思い込んでいる人達が意外と多いのには驚かされます。実際に大きく収益を上げることが出来る人は一握りの人だけだと申し上げると、どこからか非難されそうですが、事実はそうなのだという点を認めることからスタートした方が良いです。
実際問題、多くの個人投資家が、マーケットに幻滅して、退却されていくようですが、これは、実に悲しいことです。たまたま、最初のアプローチを間違えるだけ、もしくは、初歩の段階で間違った理解をしただけで、FXなり、株式投資にネガティブな印象を持ったまま去っていかれることは実に残念なことです。いつも思うことですが、投資に向いている人がいる、投資に向いていない人がいるという議論はあまり意味がありません。より正しくは、正しい投資方法を学んだか、そうでないかということです。
正しい投資方法を学んで、正しい「トレード技術」を身につければ、ほとんど誰でも、意欲さえあれば、そして、努力さえすれば、生涯収益(キャリアプロフィット)を増大させることが出来ます。
さて、ここで大事なことは、「一攫千金を目指さないこと」です。よく、FXをやる以上は、2割や3割儲けても仕方ない、1年で2倍、3倍にしないと意味がない、などと言う人がいます。中には怪しい触れ込みで「何日間で何百万円の収益」「何か月で何千万円の収益」と言った風な誇大広告を堂々としている輩もいるぐらいです。
しかしながら、このような安直な儲け話や、投資そのものに対する安易な考え方、スタンスはとても危険だと思います。正しいトレード技術を学べば、「結果として」1年で2倍や3倍になることはあり得ますが、初めから、安易にそのような高収益を目指してトレードを始めると、ろくなことはありません。
どういうことかと言うと、2倍、3倍を目論んでトレードを始めると、目一杯利食いをしようとの欲が膨らんで、利食いを遅らせてしまうケースが出てきます。もちろん、この利食いを伸ばすこと自体は、決して悪いことではなく、むしろ理想的なことです。ただし、条件として、正しいトレード技術に裏打ちされている場合に限るわけです。
つまり、ここで問題なのは、ただただ、大きく利食いたいばかりにポジションを大きくし過ぎたり、損失確定を嫌って、ポジションを引っ張ったりしていると、相場が自分の思惑と逆に動き出した時に、ポジションを調整し辛くなるということです。この「ポジション調整」とは、相場で生き残るために実に大事な行為なのです。
FXというのは、1日24時間動いているわけであり、1日に何度も上がったり下がったりします。この1日の中の波動を丁寧に捉えて乗っていくことが出来れば、収益チャンスは無限大に拡大していきます。もちろん、当たり前のことですが、ただ、闇雲にトレードの回数を増やすことが良いわけではないです。繰り返しになりますが、正しい「トレード技術」をベースとした、機動的な売買を繰り返すことで、収益チャンスを得ることが出来るわけです。
具体例として、私自身のことを申し上げると、昔、大きく儲けてやろうと、大きくポジションを張った時に限って、逆に上手くいかなかったことが多いと記憶しています。往々にして、そういう場合の自分の相場観はと言うと、「絶対ドルは上がる」とか「絶対ドルは下がる」と言う風な、「絶対〜〜」という相場観を決めつけるかのように持っていたことが多かったようです。
最悪の場合は、今回のポジションが上手く花開いてくれれば、過去何回分の損失を一気に取り戻せるぞと意気込んだことでした。いわゆる「取らぬたぬきの皮算用」式で収益を期待し過ぎてしまう時は、ほとんど悪い結果しか残らなかったことを思い出します。その時の教訓を生かして、相場を行うに当たっては、あまり予測することは良くないのだということを自覚したわけです。そして、マーケットの流れに逆らわず乗ることで、利食いをこなしながら、また、回転を利かしたトレードを行い、まさしく、相場を敵に回さず、相場と友達になる感覚を覚えたわけです。
そして、大事なことは、世の中の大勢の相場観に左右されず、自分なりに根拠ある判断に基づいて相場の方向性を見極めてポジションを造成するようにしたことです。相場が動き出してからも、利食いを小まめに入れつつ、また元のサイズに戻すという回転の効いた売買を繰り返すことで、収益が安定していったわけです。
当初の思惑通りに相場が動けば、人間誰しも、天狗になってしまう傾向があるものですが、そんな時にこそ、慢心せず、謙虚になることが大切です。本来、FXという投資対象は、「売買に回転を利かすこと」が大切です。まさに「買ったり売ったり、売ったり買ったり」が肝要だということです。こんなこと当たり前、分かりきったことと思える方は良いのですが、今一度、この基本原則を再確認して頂くことをお勧めする次第です。
■それでは、以下、具体的なトレード手法について少しご紹介したいと思います。
まずは、こちらのチャートをご覧ください。
http://www.market-homeroom.jp//
添付チャートは、1分足ベースのドル円相場のスパンモデルです。
週末金曜日(3日)夜に発表になった米雇用統計後の前後から、午前1時直前までのドル円相場の動きがよく分かります。午後9時30分に発表になった8月分の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比5万4000人減と、減少幅が市場予想平均である10万5000人を大きく下回ったこと、前月分についても改善方向に修正されたため、米景気先行きに対する過度の悲観論が後退する格好となって、投資家のリスク志向が改善したことで、ドル円相場は一気に上昇しました。加えて、多くのクロス円相場も上昇に転じました。
しかしながら、午後11時に発表になった8月分の米サプライ管理協会(ISM)非製造業景況指数が前月の54.3から51.5に低下したこと(事前の市場予想は53.2)を受けて、今度は、景気回復の遅れが再び意識されたということで、安全資産としての円に見直し買いが入り、ドル円相場やクロス円相場は失速、大幅に反落しました。
上記の解説はどこでも読める内容ということで、全く目新しいものではありませんが、少なくとも、最重要経済指標である米雇用統計後に一気に堅調地合いに変化した相場が、ISM指数を受けてあれほど反応するとは、多くの市場参加者が驚いたはずです。だからこそ、市場の円高圧力なり、円高センチメントの強さがよく分かると解説するのは簡単なことです。しかし、やはり、ここでの重要な課題は、米雇用統計後のマーケットの中でどのようなトレードをしたら収益につながったのかということです。
つまりは、今後の相場動向も見据えて、どのような展開になれば、どのようなアクションを取るべきなのかということを、今回の例をベースに学習するということです。添付チャートである、1分足スパンモデルは、様々な時間軸のスパンモデルの中でも、特に、短時間に大きく動く相場の最も適しているスパンモデルです。
誰でも簡単に判断出来、トレードの指針とすることが出来ます。判断と言っても、何ら難しく考えて判断するわけではなく、ただ見て、知るだけです。チャートをご覧の通り、米雇用発表直後に買いサインが点灯しました。青色矢印のタイミングです。ゾーンを形成している青色ラインと赤色ラインの位置だけで、サポートゾーンになったり、レジスタンスゾーンになったりするわけですが、雇用統計発表直前は、レジスタンスゾーン(赤色ラインが上、青色ラインが下)が出現していました。
そして、発表直後に、2つのラインが一致したわけですが、これは、シグナル転換を示します。尚、この判断は、終値で判断します。つまり、1分足の場合で言うと、1分毎に判断することになります。その後、サポートゾーンが出現し続けるわけですが、ここからのポイントは、青色ラインとローソク足との位置関係です。
ローソク足が青色ライン(サポートゾーン上限ライン)を上回って引けている分には上昇継続、すなわち、ロングポジション継続が推奨されますが、青色ラインを下回って引けた時点で、「ポジション調整」が必要となります。つまり、上昇相場とは、サポートゾーンが出現している局面を示すわけですが、ローソク足がサポートゾーン上限ライン(青色ライン)を下回って引けると、相場の上昇力が減退したことを示すわけです。
と言うわけで、それまで持っていたロングポジションは手仕舞うなり、減らすなり、ポジション調整が必要となるわけです。尚、念のため申し上げておくと、1分足スパンモデルの場合、青色ラインとの位置関係の判断は時に難しいこともあります。つまり、ラインに絡み局面では、あまり明確な判断が出来ないことも多いのが実情です。
この辺りは、相場の全体観をベースに判断するという難しさはある一面、相場が動いている最中に究極の判断を行うに際しては、これほど便利な手法はないと私は思っています。現実問題、私達にとって、経済指標の内容をいちいちチェックしている余裕はありません。そして、やはり、「相場のことは相場に聞くしかない」という信念のもと、チャート最優先でマーケットの流れに乗ることが大事であると私は考えます。
さて、先ほどのチャートに戻ると、ローソク足がサポートゾーン上限ライン(青色ライン)を下回って推移し始めて間もなく、今度は、遅行スパンが陰転しました。この遅行スパンは相場の基調を判断する上で最も重要な基準です。つまりは、ロングからショートポジションへの転換が示唆されたことになります。その後、レジスタンスゾーンの出現に至り、今度は、実勢ローソク足がレジスタンスゾーン下限ライン(青色ライン)に戻りを抑えられながら相場下落していったことが見てとれます。
順調に下落トレンドにあった相場ですが、やがて、今度は、ローソク足終値がレジスタンスゾーン下限ライン(青色ライン)を上回るようになります。そうすると、売り圧力が減退し始め、ショートポジションの手仕舞い、ないしは減らすというポジション調整が必要となります。そして、その後、買いシグナルへの転換(レジスタンスゾーンからサポートゾーンへ転換)とつながっていったわけです。
以上、9月3日午後9時半少し前から午前1時頃までの3時間半程度におけるドル円相場を具体例に、1分足スパンモデルに絞ったトレード方法に関して、簡単に要点だけをご説明致しました。
簡単な解説でしたが、少しでも、皆様のご理解につながれば幸いと思っています。そして、今後のご自身のトレードにて「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」をお役に立てて頂ければこの上ないです。
とにかく、あれこれ「相場材料」「相場変動要因」に関して考え悩んで、手をこまねいているよりも、実際の相場の流れに如何にしてついていくかという方法、つまりは、「トレード技術」を身につければ、相場とは、何ら怖いものではないことを分かって頂けると思っています。
以上です。
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2010年09月01日(水)
「材料出尽くし感」について [雑感]
小沢前幹事長が、民主党代表選に際して発表した政見に、2兆円規模の円高対策と共に、「市場介入を含むあらゆる方策を果断に実施する」との内容が含まれていたことで円安に振れる場面があったりしつつも、総じて、疑心暗鬼な中、ドル円相場やクロス円相場は小康状態を保っているようです。相場の地合いからして、今後、要人から、「円高」「株安」を巡っての様々な発言が出てくる可能性は高く、その都度、相場が右往左往しそうな気配濃厚となっています。
実際のところ、今週、「株安」「円高」に対処するために、政府の緊急経済対策が発表になったり、日銀の臨時政策決定会合が開かれて追加金融緩和策が打ち出されたりしました。これらの政策が発表されるまでは神経質な状況の中、じりじりと円安が進む局面があっても、一旦、全容が公表されると、市場はそのタイミングを待っていたかのように、円の買い戻しに入るという、まさに古典的とも言える「材料出尽くし感」からの揺り戻しの展開が見られています。
ところで、「材料出尽くし感」からのドル売り円買いが活発化、などという解説は、確かに終わった相場を後から語る分には実に的を射た表現と言えます。しかし、マーケットのど真ん中にいてポジションを張っている投資家にしてみると、ハラハラドキドキの一瞬が続きます。いったいどの段階、どのレベルになれば、エントリーしたり、手仕舞ったりするのが良いのか、神経質な状況に置かれます。
政府によって大した円高政策は打ち出されないだろうとか、日銀の金融政策は新味に欠けるということは、市場参加者の大半が考えたり、感じたりしていることです。つまり、大多数の市場参加者が同じ思いでトレードしていると想定される中で、トレードする限りは、いつ、どこで、どのようなアクションをとれば良いのかの的確な判断が要求されるわけです。
押し目買いなのか、戻り売りなのか、それとも、突っ込み買いなのか、突っ込み売りなのか、まさに、一瞬一瞬、投資家の頭を悩ませ続けるのがこの相場というものです。言ってみれば、自分なりの「根拠ある判断基準」を持たずして相場に入っていくと餌食になるだけです。いつも申し上げていることですが、「相場観」ではなく、「トレード技術」を磨くことが何よりも大切と言えましょう。
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2010年08月28日(土)
「円高」と「為替介入」について [雑感]
★本日発行しました。無料メルマガにて「円高」と「為替介入」について触れましたので、ご参考の為に、こちらのブログにも転記致します
■この最近、「円高」に関する報道ニュースが急速に増えています。確かに、「円高」そのものが日本経済、とりわけ輸出企業に及ぼすネガティブ効果もさることならが、日本経済全体への悪影響を意識していることは事実です。景況感が悪化するという意味では、確かに「円高」は株価に対して影響度が大きいです。ただ、ここで思い出して頂きたいのは、本来の図式として、「円高」イコール株安というわけではないことです。
一例を挙げると、1998年当時、ドル円相場は147円台までドル高円安に振れました。その時、株価は大きく株安方向に向かっていたという事実があります。すなわち、ドル円相場が1995年4月に80円(79.75円)を付けた後、ドル高円安方向に転換、1998年8月に147円(147.64円)を付けるまでの過程での株価動向がどうであったかと言うと、当初、1995年4月の80円から1996年央にかけて110円程度まで戻るステージでは、株価は上昇基調(14295円から22750円まで上昇)となりました。
ところが、1996年6月に22750円を付けてから1998年10月に12787円まで下げるまでは、一貫して株安方向に動きました。その間の外国為替相場との関係はどうであったかと言うと、「後講釈」として、適度な円安(110円程度まで)であれば、株式市場にとって好材料であったものの、それを上回る円安は、株式相場の売り材料にされたと言うことです。ただ、この辺り、どの水準で円高、円安と線引きするかは、後になれば、「後講釈」出来ますが、それぞれの局面では、判断は極めて難しかったことは事実です。
実際問題、当時、私は、ある米銀のディーリングルームにいたのでよく覚えていますが、日経平均が買われると円高、日経平均が売られると円安とマーケットエコノミスト(ディーリングルームに所属するマーケット専門のエコノミスト)達が叫んでいたのを覚えています。つまり、今現在の株価と為替のパターンと全く逆向きであったということです。
ところで、当時、私は、マスコミ向けのコメント用として、「ファッション」と言う言葉を多用しました。つまり、市場が、株安=円高(株高=円安)、もしくは、株安=円安(株高=円高)と判断するのは、そのときどきのマーケットにおける「ファッション」のようなものだと説明したわけです。
確かに、市場参加者の立場からすると、今現在、市場は何に関心が向かっているのか、何を判断材料として反応しようとしているのかを知っておくことが大事なわけです。別に、材料に対する判断や行動が、経済原理に従っていようがいまいが、お構いなしです。例えば、日銀総裁などは、昔から頻繁に、「円高は国益に有利なこと」などと表明することが多いです。
国益に有利であれば、株式市場が円高をいつも好材料として受け止めてしかるべきなのですが、実際のマーケットの反応はそうではないのが過去の歴史が示す通りです。そもそも、日本は資源輸入国だから円高が国益にとって有利だと言うことを、ここで声高く言ってみたところで、単なる評論家で終わってしまうだけであまり意味がありません。
もっと言うと、そもそも株式市場は、世界中、ほぼ同方向に動いています。高安の度合いの違いはあるものの、各国の株価指数の互いの相関性はかなり高いものがあります。となると、ここで不思議な現象が生じていることが分かります。何故なら、円高で日経平均が下げるのであれば、ドル高でNYダウが上がっても良いはずです。しかしながら、実際には、日経平均もNYダウ、さらには欧州各国の株価指数もほぼ同方向の動きをしているのです。
ところで、別の観点からお話すると、リスク許容度が上がる、下がるということが言われ始めて久しいですが、「ファッション」はと言うと、「株価上昇=クロス円上昇」「株価下落=クロス円下降」という図式となっています。少し前までは、低金利の円を借り入れて、その円を売り、高金利の外貨を買うという、まさにクロス円の買いのニーズが生じる局面と言うのは、リスク許容度が上がっている時であり、リスク許容度が下がれば、それらクロス円のロングポジションの手仕舞いからクロス円相場の下落につながる、と言うのが誰もが想定する「パターン」であったわけです。
しかしながら、最近は、世界的不況のあおりを受けて、各国金利も低下し、いわゆる「キャリートレード」なる表現は、かなり鳴りを潜めてしまったようです。従って、「スワップ金利で稼ごう」式のトレード手法を全面に押し出す人もさすがに減少したと見受けられます。ただ、これでようやく、本来の外国為替相場に対する正しい認識が高まったと私は見ています。
つまり、外貨証拠金取引(FX)というのは、スワップ(キャリングメリット、もしくはインカムゲイン)で稼ぐのではなく、キャピタルゲイン(売買益)で稼ぐのが本来の姿だということです。その意味で、最近のFX市場は、本来の外国為替市場になっていると思われます。
■さて、「円高」がもたらす影響について、幾つかの観点から見ていますが、ここでは、今、市場にて話題となっている「為替介入」に関して触れてみたいと思います。
今、市場では、為替介入警戒感から円売り圧力が強い等のコメントが聞かれますが、事はそう単純ではありません。まず、結論から言うと、金融当局による為替介入は長い目で見て、多くのケースにて、為替相場が、結局は、金融当局が狙う方向に落ち着いたことは事実ですが、その途中では、全く介入が効かなかった場合も大変多かったということです。
先ほど、多くのケースにて金融当局の思惑方向に落ち着いたと書きましたが、実際には、金融当局が市場の圧力に負けたケースもあったということです。より直接的に言うと、介入が効くか効かないかは、結局は相場の自律的な動きに左右されるということです。
一例を挙げると、ドルが反転上昇するタイミングにてドル買い介入が入ればドルは急上昇しやすいということです。逆に言うと、ドル下落局面の真っ只中でドル買い介入をしても効かないどころかさらにドル下落加速するということです。つまり、ドル本格下落局面にて、ドル買い介入があると、一時的にはドル反発しますが、そこがドル戻り売りの絶好のチャンスとばかりに世界中からドル売り注文が入り、結局は、介入した時のレベル以上にドル安が進んでしまうケースが往々にしてあるということです。
これは、私が実際に何度も経験したことなのですが、一例を挙げると、米銀に在籍していた当時、ドル買い介入が入って、日銀からのドル買い注文を市場に出している時、同じタイミングで、海外の支店から大量のドル売り注文が入ったのです。海外支店や海外支店の顧客は日銀の介入でドルが買われていることを知った上で、大量のドル売り注文をしてきたのです。この状況は見た目には確かに滑稽なものでした。
何故なら、私のいた銀行(米銀・東京支店)が市場でドルを買うと同時に、ドルを売っていたのですから。日銀からのドル買い注文と、海外支店からのドル売り注文をマッチングしてしまうことは許されない為に、実際の売買注文を市場に出さねばならないと決められていることから、このように事態となったわけです。
ですから、こちらがドル買いの為にインターバンク市場にてカウンターパーティーである相手銀行を呼んでドル買いを行う一方で、ドルを買わせてもらった銀行とは違う銀行を呼んでドルを売らねばならないわけです。ここで、もし、ある銀行からドルを買ったのと時間を置かずして、この同じ銀行に対してドルを売った場合、自分の銀行のレピュテーションを大いに貶めることになるリスクが生じます。
インターバンク市場というのはそういうものであり、インターバンク市場に参加している各銀行が互いに流動性を供給し合って、互いを助けているようなものであり、そこでは、一種の「紳士協定」のようなものが存在しています。
従って、どの銀行がどのような売買を行っているのかは、市場参加銀行の間で、ある程度まで分かってしまうものであるだけに、短時間での逆の売買が下手な振舞いと捉えられてしまう傾向があるのは事実です。その為、レピュテーションリスクがあると言っていいわけです。
■さて、本題に戻ると、要するに、為替介入というのは、その時のマーケットの地合いによって、介入効果が大いに異なってくるという点、覚えておく必要があります。
よくあるケースが、介入期待のドルロングポジションの積み上がりが増えてくると、ドル買い介入したにもかかわらず、介入した瞬間から上がらない、むしろ下がるという展開にもなりかねないということです。この介入期待という点はよく覚えておくと良いと思います。と言うのも、今後、益々、市場では、為替介入と言うことを話題にするでしょうし、マスコミもこぞって取り上げるであろうからです。
私達は、常に、冷静になって、この状況を察知し、プロフェッショナルに行動することが求められると言って過言ではないでしょう。尚、別のケースでは、不意打ちの介入であると、効果は絶大なものとなる可能性もあります。まさかのタイミングで介入が入ると、市場参加者が期待していなかった分、効果が倍増するというわけです。
このように、為替介入というのは、金融当局である政府・日銀も市場参加者の一員であるという認識が必要であり、もし、金融当局にマーケットに対する洞察力があると、それだけ、多くの介入資金を使わずに効果的な介入を実施することが出来るというものです。この点、FRB(米連邦準備制度理事会)の代表として為替介入を行うニューヨーク連銀は昔から介入を効果的に行うという意味では、日本の政府・日銀とは一線を画しています。
何故、効果的に介入を実施するかと言うと、絶妙のタイミングで介入してくるということです。しかも市場参加者の不意を突く、実にプロフェッショナルであると言えます。その為、介入資金も僅かで済むという利点もあります。そもそも、米国では、連銀の為替介入に関しては、介入資金の調達が絡んでくるだけに、議会がその善し悪しに口を挟む仕組みとなっており、連銀も、議会の理解を得られるように、如何にして効果の高い介入を行うことが出来るかを常に調査、探究してきていると言えます。
この点、日本の場合は、すでに、新聞やテレビの報道などで、「事前に」為替介入や円高対策について発表してしまう傾向があります。日銀の金融政策にしても、最近でこそ、政策委員会・金融政策決定会合の結果を、固唾を飲んで待つというケースもありますが、ほとんどが「事前に」市場が織り込んでしまうという特徴があります。
この「市場への織り込み度合い」が高ければ高いほど、実際に介入実施や経済・金融政策等の発表がなされた時の反応が鈍くなるという点、私達、市場参加者は十二分に理解しておく必要があります。ここで大事なことは、やはり、市場は市場の動きを自らが決めるということです。「マーケットのことはマーケットに聞け」とも言えましょう。
相場が自律反転する途上にある時、もしくは相場が間もなく自律反転する可能性のあるタイミングを迎える時に、為替介入を実施すれば、実に効果的だということです。この絶妙のタイミングを計る上で、時間の節目を判断材料に入れれば、政府・日銀としては、ベストパフォーマンスを出せるものと期待出来ます。
要するに、市場の大勢が予想するタイミングで為替介入を行っても、成功するかどうかは、この相場の流れがどうなっているか次第であると言えるわけです。「マーケットのことはマーケットに聞け」をしっかりと頭に入れて臨んでいれば、いつも通り、淡々とトレードするだけで、結果はついてくるというものです。
■「ツイッタ―」で、毎日、少しずつ、マーケットについてつぶやいています。
アカウント名は murphyFX です。
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